ほしとたいようの診察室
第6章 回想、はじめまして
それから、のんちゃんの容体について話し始める。
「のんちゃんは……今回、3月の半ばから入院してる。昨日の夜はサチュレーションが低めで、喘息も出てたから、吸入薬を処方して、酸素つけて一晩過ごしてもらった。……まあ元気になったらああやってすぐ外す」
今回、ということは前回もあり、前々回もある。それだけ入退院が多く、経過も長い。
「本当に苦しい時はマスクでもカニューレでも外さないから、逆に外さない時ほど急変に注意」
「承知しました」
「あとは……けっこうよく転ぶ。ベッドから落ちるし、病棟走り回ったりして」
「血液の薬飲んでますよね?」
のんちゃんは、血液が体内で固まってしまう病気だ。薬の兼ね合いから、出血を伴う怪我は厄介なことになることは、十分に想像できる。
「ああ。出血には注意だな。ナースにも注意してもらってる。内出血の有無もよく見といてほしい」
「はい」
「のんちゃんの主治医は俺だから、なんか気になることとかあったらいつでも聞いてくれ」
「わかりました」
「よし、これで回診は終わりで……それから、担当患者だが、5号室の……」
そのあとは、担当患者の振り分けを受けた。
決して少ないとはいえない患者数の割り振りに、俄然やる気が出る自分で良かったと思っていた。
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