
ほしとたいようの診察室
第5章 緊急入院と夏
……
小児科医局に戻る。
荷物を揃えて、着替えを済ますと、地下一階の駐車場へと降りていった。
「なんか、懐かしかったな……」
誰に聞かせるでもなくつぶやいて、車を発進させる。
車を地下から出すと、地上はもう夏の日差しが降り注いでいた。
今年の夏は早いな。そんなことを考えながら、ハンドルを握る。
なんか懐かしかったのは、久しぶりにのんちゃんの治療に入ったからだろう。
のんちゃんと出会ったあの夏は……
そしてそこからの1年半は、色濃い思い出が多い。まるでビビットカラーや原色の絵の具を叩きつけたように、脳内のキャンバスに様々な思い出が刻み込まれている。
運転しながら、のんちゃんと初めて出会ってからのことを思い出していた。
