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副業は魔法少女ッ!

第2章 魔法少女の力




"針になって。獲物はこっち"



 その一帯の雑草が、動き出す。それらは不可視の磁石にでも吸い寄せられるようにして、ピシピシと鋭利な直線になると、横降りの雨に似通う動きで黒い物に襲いかかった。



 ぉあ"ぁ"あ"ぁッッ…………ぎぃ"ぃ"い"ぇ"えええ"え"…………



 呪ってやる。死んでたまるか。呪ってやる。肉体の消滅に替えても、この怨みはお前達の破滅の糧になる。



 この世のものとは思い難い咆哮から、砕けていく黒いものの意思が、ゆいかの頭に流れ込む。黒いものが何を訴えたがっているか、言葉として明瞭になるにつれて、それ自身は尖端を持った雑草の針山になって、禍々しい液体を散らせながら、身体をしならせていく。


 見る影もなくなった黒いものの足元に、なずなが濁った石を置いた。



 何……で──……わた、し……だけ…………お前達、が…………。



 顔の位置にあったはずの空洞が、もごもごと何か呟いていた。まもなくそれは、意思から意思への伝導も出来なくなると、言いようのない怨嗟の影は跡形もなく姿を消した。

 残ったのは、さっきの石だ。



 ノースリーブの袖口にフリルの付いたスクエア襟のトップスに白いレザーのアームカバー、それらと同系色の膝上スカートは色とりどりの花のプリントが前面を彩って、足元はカチューシャと同じサーモンピンクのショートブーツ。

 なつるに言わせれば、普段の格好とどこが違うのか分からないらしい魔法少女の変身を解いて、ゆいかは元の姿に戻った。

 傍らで、なずなも変身を解いていた。普段の姿に戻った方が、彼女はより華やかだ。

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