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副業は魔法少女ッ!

第6章 幸福の血肉



「ゆいかさん!……ゆいかさん!」


 悲痛な声が、ゆいかを惑わせていた闇をこじ開けた。


 我に返ると、なずなの顔が、ゆいかの視界を覆っていた。

 右手には馴染み深い感触。

 あのウサギのマスコットだ。


「良かったぁ……。放心されてたみたいだったよ。なつるさんは、大丈夫ですか?」


 絶望の情景に見たあの赤い塊は、なつるの着ているビスチェだった。紫色の巻きスカートが、蝶の羽のように広がって、横たわった彼女を幻想的に飾っている。


「ん……ん……」


 そのなつるが寝返りを打った。彼女の薄目に、動揺とも驚愕ともつかない色が表れた。


「なずなちゃん……?!」


 ゆいかも遅れて、この状況の説明し難さに気づく。

 なずなが姿を変えていた。

 彼女は、普段の魔法少女服をまとっていなかった。

 肩口のフリルから伸びた七分袖に、鮮やかな青のコルセット。ラウンドネックの光沢のあるワンピースは水色のオーガンジーが重ねてあって、それらと同系色のラインストーンが散らばっている。くびれた腰がいっそう広がりを強調するスカートに重なる白い巻きスカートをウエストに留めているのは、翼のような大きなリボン。ロリィタでも彼女らしからぬ装束の中で、唯一、彼女を彼女と証している濃淡のピンク色のツインテールは、どこからか入り込んでくる光を浴びて、淡い部分が金色にも見える。

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