ナカまで愛でてトロトロに溶かして
第5章 【ターニングポイント】
「ありがとうございます!湯川さんも喜ぶと思います!自ら書きたいって言ってましたから、わぁ、夢が叶う!本当ありがとうございます」
夢だなんて、こっちのセリフ。
良いんですか、私なんかの作品でって言ったらめちゃくちゃ謙遜されてしまった。
サインも求められちゃって快く引き受ける。
「ちなみに、キャストにお願いしたい俳優は居ますか?」
突然そんな事を聞かれ頭が真っ白になる。
誰も想像出来ない。
私の中で創り上げたいキャラ達に重なる人は居ない。
だから全てお任せしますと伝えた。
世界観は壊さない……その言葉を信じて。
「まだ当分はこの事は内密にな、宣伝出来るようになるまでは他言しないように」と鍵山さんに言われた。
なので可愛いアシスタントちゃん達にも家族にも言えない状況。
ヒャッホウ!と叫んで飛び跳ねたい気分なのに。
帰りのエレベーター内で
「まさか酔っ払って周りに言っちゃうんじゃないだろうな?暫く見張ってるぞ」と腰から引き寄せてくる。
油断出来ないのはそっちだよ。
手を引き離して距離を保つ。
急に距離感縮めてくるから一番危険。
まだ漫画家と担当者で居させて。
家まで車で送ってもらう。
「珈琲飲みたい」
なんて、家に転がり込む口実。
承諾もしていないのに来客用駐車スペースに停める。
「飲んだら帰ってね」と念を押すが玄関入った瞬間に唇奪われてるんだもんね。
こうなるとわかってて家にあげちゃう私も私だけど。
靴くらい脱がせてよ。
「めっちゃテンション上がってんだろ?改めてドラマ化おめでとう」
「ん………ありがとう、ございます」
「なに、その他人行儀……俺も相当頑張ったのにな」
「感謝してます……ハイ」
「ウソ、一番頑張ったのは悠だよな、やっぱお前は俺の惚れ込んだだけある天才なんだよな」
「ん、やめてください……調子に乗っちゃうから」
「乗れよ、今は乗るとこだろ」
靴を脱いで電気をつけていく。
スリッパを履いて後ろからついてくる鍵山さんも慣れた様子でジャケットを脱いではソファーに掛ける。
まるで夫婦のようにそれをハンガーに掛けて吊るす私に背後から抱き締めてくるのも自然と受け入れていて。
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