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イラクサの棘

第20章 きっかけ





「それって大きめのキャンバス?」

「ああ、かなりのデカさだよ。」


それから、以前から先生の財産分与の話で
別荘の権利と、その中の家財道具を
翔さんに相続させるって話が出ていて
翔さんは権利辞退することも考えてたらしいけど

別荘にある芸術コレクションの全てを
相続させてくれるなら
貰い受ける事を承諾してやるって強気な
返事を伝えたそうだ。




「くそでかい別荘の管理なんて
面倒なだけだと思ってたんだけど
どうしても、あの絵画を
ヒカリの中の天使を
俺のものにしたかったんだ。」


もしそれが…
智が描いたものだとしたら?


ただの素人の大学生が描いた作品
その絵のモデルの人物に強烈に魅力された翔さん。
もしも実在していなかったら、
人ならざるモノへの募る憐れな恋心。


「その時点で
けっこう頭の狂った男になってただろ?」


片手で運転しながら
照れ臭さそうに鼻の頭を掻いている。

      

「そしたら今年になっておっさんに呼びだされて
ある人物を旅行に連れて行く計画を立てて
うまくその旅行に連れだせたら
あの絵を含めて芸術コレクションの
全てを俺に譲ってもいいって言ってきたんだ。」

「……先生が?」
 

ある人物って俺だよね?
旅行の計画って今回の…だよね?
なんで俺のことを翔さんに?

またすこし熱が上がってきたみたいで
考えがうまくまとまらない。



「待ち合わせしてた病院の談話室のフロアで
自販機の前で首を傾げながら
うつむき加減で悩んでた潤の後ろ姿の
見た時に、ドキッとしたんだよ。」


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