
一途とは 続編
第3章 甘酸っぱい
ひとしきり、私のことを精一杯抱き締め
仰向けになって、
黒柴色のアイシャドウのように
瞼に連なる隈を私に見せながら
「俺、寝起き酷いんだよ。
理性が無くなるし、人肌が恋しくなる。
俺、まだ生きているんだって思って
自分がどこにいるのか、分からなくなるんだ。」
この、山口翔太という人間は
どんな青年期を過ごしてきたのだろうか。
どんな、痺れる思いをしてきたのだろうか
よく、生きてきたね。
よく、生き抜いてきたね。
私の前にいることが、奇跡みたいだ。
今、翔太は、ここにいるんだね。
ね、翔太。
続けて
「さっき気付いたのは
起きて、理性を失って逃げ出してるんだなって気付いたのと
なんか、気が緩んでしまった。
寝起きは人肌が恋しくなるから、その場に人がいるという状況を作らない。
そうしないと、どうにかなりそうなんだ。」
翔太。
翔太。
ねぇ、早く、
