
仔犬のすてっぷ
第8章 お出かけ♪
「買います!!」
「お買い上げ、ありがとうございます☆」
そう、やり取りしながら鍵を差し出そうとすると
「・・・なに、してるのさ?」
ズボンの後ろポケットから皮の長財布を取り出した蒼空は、財布の中身の確認を始めた。
「…いや、こういう場合、追加でお金出したら特別なサービスも………足りるカナ?」
この、トンチキな方向から飛んできた彼の言葉が頭にぶつかった。
僕の体が左側、斜め45度にかくんと傾く。
「と……とくべつな、さあびすとは、なんで、ございま、しょうかぁ?」
こやつが考えている事が、僕がうすうす感じている事とほぼ間違い無い事を、彼のど真剣な表情から読み取り、怒りが湧き上がる。
……鼻血、出てんぞコノヤロー(怒)
「とりあえず、今夜の禊ぎ代……はっ!?さ、殺気?!!」
僕は上半身はまっすぐ起こしたまま、脚を肩幅まで開き、半腰落としながら弓引きの構えを取る。
「お客様っ、またのご来店…お待ち…」
蒼空の、がら空きの懐に一気に踏み込みながら、全体重を下半身へ落とし込みつつ…
背中を彼の体に向け、肩からやや下あたり……肩甲骨を、腕を上げると同時に叩き付ける。
ズバあんっ!!
床を踏み付ける、震脚(神脚)の音が店内に響き渡る。
同時に蒼空の体は、漫画のやられキャラのように ばびゅん! と店外に吹き飛ばされた。
「…申し上げますっ!!」
八極拳の技のひとつ。鉄山靠。
僕が小学生のベストの時には、当たればトラックのタイヤがノーバウンドで8メートル飛ぶ程度の破壊力はある。
「……安心しな。峰打ち程度には加減しといたから」
表の小さな噴水に、だっぱあん!と蒼空が着水した水飛沫が上がった。
「……この、バカタレぇ・・・」
