
仔犬のすてっぷ
第25章 仔犬達のワルツ3 アキラ VS サラ
「……あの霧夜ってやつは、なんか変な術みたいなんを使うかんね?警察に捕まったはずの奴がココにいる以上、逃げ切る自信がある筈なんやわ。
あやつのタネが判らんとまた逃げられてまうやろ?そのタネをトーマスが見つけるまでは付き合ってもらわにゃーと……」
そう言うと、サラが一気に距離を詰めて来る。
しかしアキラはガードしなかった。
さっき話しながらスイッチを入れた、右の篭手をサラの左ジャブに合わせてカウンターを狙ったのだ。
(…サラのクセ、距離を置いた時の彼女の一撃目は必ず左のストレートパンチ…ドンピシャっ!)
ーー バチンっ!
・・・一応、アキラの右の篭手がサラに接触し、スタンガンが起動して電流が流された、が……
「・・・がはあっ?!」
「Оh?!Ouch!」
彼女の左のストレートパンチはフェイクで、代わりに右膝蹴りがアキラの腹部へ突き刺さった。
お互いによろけながら後退る。しかし、アキラはそこでは終わらせない。
「……今だっ!」
よろけながらも左のガントレットの手首をひねり、二本のワイヤーロープを射出する。
スタンガンを受けて動きが止まったサラにヒュルヒュルと二本のワイヤーが飛んでいき、彼女の左肩と越しに絡まった。
ーー びしゅん!がちっ!ぶつっ…
ガントレットの射出口を地面へ向け手首をひねると、ワイヤーの先に鉄の杭がロックされ、杭が地面へ突き立てられた。同時に自動でワイヤーを切り離す機能が働き、サラはワイヤーごと地面へ固定された事になる。
「ちょい、待ってーな!こんな事されたら霧夜、捕まえられへんやん?!」
「…貴女が僕に手を抜いていた事は判ってます。時間稼ぎをしたかった理由も分かりましたし、霧夜を捕まえる事に協力も惜しみませんが・・・こちらも急ぐ事情があるんです。
大丈夫、その拘束は5分程で解除されますから」
それだけ言うと、アキラは建屋の方へゆっくり歩き出した。
(……膝蹴り一発で走れなくなる程、脚に来るなんて……まだまだ鍛え方が足りなかったな……こんな事なら潤の組手にもっとつき合ってやればよかった・・・)
