
仔犬のすてっぷ
第21章 奈落の裏では
「港区にある廃工場。どうやらそこにいるらしい……んだが・・・」
「むんふぁほ、ほへ。ほこでそんな情報・・・おっとっとっ…ふう」
アキラは驚き、咥えていたサンドイッチをポロリと落としそうになる。
わちゃわちゃと食べかけのサンドイッチをお手玉のようにおしあげ、なんとかキャッチして安堵の息をついた。
「襲ってきたオッサンが、去り際に言い残して行ったんだが・・・」
「罠……か?」
「はん?ワナ?何の為に?そんなもの、コチラへ仕掛ける意味無くねぇ?」
アキラが腕を組んで考えるのを、潤は鼻で笑いながら問いかける。
その横ではカリームがタブレットを操作し、港区のマップを呼び出していた。
「確かに……こちらには罠を仕掛けられて困るいわれはありません。でも、捜索を撹乱させるつもりなら、それは有効になりますね………」
カリームは、今にも立ち上がって出て行きそうな蒼空に、両手で “まあまあ、落ち着いて” とジェスチャーを出しながら、タブレットを覗き込んだ。
“廃工場” で検索した結果、それを示すマークの数の、あまりの多さにう彼は眉をひそめた。
「……仮に本当に港区に連中のアジトがあったとしても、情報が少なすぎます。廃工場なんて、あの広い地区にどれだけあると思ってるんですか?」
「・・・ちっ……クソっ!オレは、非力だ。オレにもっと力がありゃあ…!」
「……アホ抜かせ。お前がそれ以上強くなったら誰もツッコミ出来なくなるだろうが・・・」
潤が頭を掻きながら苦笑いして蒼空を見る。
…と、そこへ。
ーーー どかどかどかっ!バムっ!
けたたましく足音を響かせ、ノックも無しにいきなりドアを跳ね開けて、森川店長と幸が入室して来た。
「蒼空!大丈夫か?!
林原が彼女と二人で拐われたってのは、本当か?!」
