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仔犬のすてっぷ

第3章 風海 蒼空 (かざみ そら)



「で、何とかスキを見つけて逃げてきたんだが、財布もスマホも取り上げられてたからさぁ〜…
3日何にも食べず、養老の山の中からここ(名古屋)まで、隠れながら来たからよぉ〜…流石にキツかったって」



養老から、ここまで……?
歩いて?来たって
・・・なんかのドラマみたいな話だなァ…。

それに、もうひとつ・・・話より気になったのは。




「……どした?そんなに俺の話、面白かったか?」

「まぁ…ね。だけど……」

ふうぅ…と、小さくため息をついてから、僕は蒼空に正直な感想を伝えた。




「・・・ホント、よく喋るやつだなぁ〜…って、呆れた」


ズべしゃっ!!

 勝ち誇ったかのようにテーブルに肘をついていた蒼空は、潰れてテーブルに寝潰した。

しかしまあ……彼が話し始めて、ここまでかれこれ一時間半。
…ここでは端折ってるが、色んな場面での武勇伝を擬音も交えて熱弁する蒼空に、僕は開いた口が塞がらない状態になっていた。


「……んだよぉ?知りたいだろうと思ったから話したのにさあ」


「そんだけ喋るんだから、口が堅いってのも……どうなんだか、ねぇ?」

僕は、はははっと軽く笑ってから朝食の食器を片付け始める。


「…なあ、アンタ……ほんっと、実はオンナじゃねえの?」

がちゃがちゃあっ

手にしていた食器を危うく落としそうになり、僕は食器を手元でワチャワチャさせた。


「キミね!見たんだから分かったろ?!」
「見たのはトランクスまで。その下は見てねえからな♪」


 こ、コイツ……ぜったい僕をからかってやがるなあ?!
その下なんて、見せるわけないじゃん!


「お〜…赤くなってんぞ?なんで?」
「え"……」

さっ!とカウンターに置いてある手鏡を覗くと



「はははっ♪意識しちゃって、可愛いじゃん」


かっ……担がれたっ!!
それに、なんかホントに少し赤くなっちゃってるしっ!(焦っ)



「……そういえば、アンタ、名前は?」


「は…林原 優希……」

「ゆうき……か。アンタにぴったりな、いい名前だな」



蒼空は、そう言うとニッコリと笑った。




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