
先輩!彼氏にしてください!
第8章 危険人物
「葵ちゃん、ちょっとほのかと2人きりにさせて」
「え」
「うぁっ…も、もちろんです!! てか空気読めてなかったですね! すみません!」
そそくさと生徒会室を退散する葵ちゃんを見ながら私は腕で汗を拭いながら立ち上がる。
持っているハケからぽたりとペンキが垂れそうになっている。
それに慌ててハケをペンキの缶につけるのと同時に心臓がバクバクとなっているのが分かった。
何か話さないと。
でも、何を話せばいいのか分からない。
困っているうちに、新先輩の方が「で……」と言葉を続けた。
「決めた?」
「………決めたって」
「俺にするか、あの…なんだっけ? ホマレ? っていう子にするか」
飄々としている先輩を見ていると、やっぱり胸が少しだけ苦しくなる。
それはきっと約1年ほど前のことを思い出してしまうからなんだろう。
「………先輩…彼女とは別れたんですか?」
私の問い掛けに、新先輩は表情一つ変えない。
それがいつも本当に嫌だ。
「別れたよ」
「…………いつですか」
「うーんと。1週間前かな」
出たよ………
1週間ってむちゃくちゃ最近じゃん………
本当、この人はブレない。
