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まどろみは君の隣で

第1章 安全なラブソング

 夏が来ると毎年思い出す光景。鋭い猫目を細めて彼女の柔らかそうな長い髪を撫でる彼の後ろ姿。野球で鍛えた筋肉質な二の腕が、まるで彼女を抱き締めるためだけに存在しているかのように動く。汗が頬を流れて地面にポタリと落ちる。その光景が、感触が気持ち悪くて、でも動けなくて。私は呆然と立ち尽くしたまま太陽の熱がジリジリと肌を焼いていく感触だけを感じていた。

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