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ドSな兄と暮らしています

第6章 汐夏の挑戦


「何で間違ったかは、自分でわかる?」
「うん」
「解き直してみて」

今ならわかる。どこが間違えたか、すぐにわかる。兄ちゃんに教えられることなく、もう一度やると正しい方ですらすら解けていく。

「焦っていると、解ける問題も解けなくなる感覚、わかったでしょ? これで結構、入試の本番にやらかしちゃう」

「うん」

「じゃあ今日は、昨日やったところの問題、苦手みたいだったから、もう少しやってみようか」

そのまま、怒られることもなく、説教もなく、今日の分の数学に入っていく。
覚悟を決めていたけれど、意外と普通に進んでいく。
教えられて集中しているうちに、竦めていた首もゆっくり伸びていった。



結局、ものすごいペナルティもなかった。いつもの様に教科書に明日までにやっておく問題に付箋を10枚貼って、終わりになった。

「はーい、今日はここまで〜。明日はしっかりやっておくこと。いいね?」

隣から私の顔を覗き込んでくる。そんなに強い眼差しで見られたら、頷くしかない。

「はい…… ありがとうございました」

私はほっとして小さく安堵のため息をついた後に、休む間もなく、ペンを握り直す。

兄ちゃんはそんな私の頭をぽんぽんと撫でると、冷やしていたお酒を取りに私の傍から離れていった。

私はそのまま、明日までにやる問題に手をつけはじめた。こういうのは忘れないうちに、後回しになる前にやっといた方がいいなと学習したのだ。

……ほっと安心したのも束の間だった。
この時はまだ気づいていなかった。



あの兄ちゃんが『お仕置』を用意しないはずないのだ。

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