居候と実況者が恋に落ちるまで。
第2章 本当は3人暮し、だったり?
ひと休みをするのにティーパックで簡単に緑茶を入れる。苦味と甘み両方が湯気に混ざって鼻をぬけた。
そうだ、一色さんは休憩の合間にお茶なら何を飲むだろう。水を持って部屋に行く姿は見たけどお茶は…って。
あれだ、選ばれたお茶のフタがいっぱいあったの忘れてた…これじゃあ『お茶入れたので失礼しまーす!作戦』が出来ない。
それならカロリーバーを持って入る?いやいや、流石にそれは違和感しかない。
・・・あ!そうだそれだ、カロリーバー!
あれを食べるってことは絶対に包装のゴミが出る。ということは、ゴミ箱のゴミを回収するフリをして飛び込んでしまえばいいんだ。
嫌がられるだろうな、クビになるかも。
だけど、そうなった時はそうなった時に考える。
今は兎に角、3人で暮らしているかもしれないという気持ち悪さをどうにかして払拭したい。
そうと決まれば、ゴミ袋を持っていざ!
***
…よしよし、やっぱり声が聞こえてる。
狙い目は笑っている時、少しでも一色さんの機嫌が良さそうな時がいい。
かつてこんなにゴミ袋を強く握りしめたことがあっただろうか、そう思うくらい手に力が入っている。
『…っは、…あはははっ…!』
い、今だ!突撃!
コンコンッ
扉を2回ノックして返事など待たない、すぐにドアノブを引いた。
ガチャッ!
「…っ…え、……高月さん?」
そこには、驚いた表情でこちらに振り向く一色さんがいるだけ。あ、あれ?
「あ、えっと、その…ゴミ、ゴミの回収に…」
「…ゴミ?あ、自分でやるから大丈夫」
他に誰もいないなんて。それじゃ、あんなに聞こえていた声の主は一体どこに行ったの。
どうしよう、混乱して次の言葉も行動も出て来ない。
「あの、高月さん。他になにかあるの」
「う…」
なにか、何か言え!
「一色さん!は、パスタなら何が好きですか?!」
「パスタ…」
なんでよりによって訳の分からない質問をしたんだ、私…それにご飯は一緒に食べないって言われてるのに。
「ご、ごめ…」
「ミートソース。肉が多めの」
「へ…」
「あれ違った?もしかして麺の種類聞いてる?」
まさか、答えてくれるなんて思ってなくて。
こんな何でもない会話を出来るなんて知らなくて。
「い、いえ…一色さんパスタ食べるんですね」
「え?…ふ、ははっ高月さん、面白いね」
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