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風に吹かれて2

第43章 五里霧中

リハビリだから、当たり障りのないことを書こう。
本日の出来事。
朝、出勤の際、最寄り駅から会社まで徒歩で坂道を登っている時に、突然見知らぬ男性に話しかけられました。

「スイマセンちょっといいですか?」

「はい?」

気がついたら瞬間移動したみたいに目の前に迫っていた男性は気弱そうな雰囲気で、身長高めの痩せ型体系、デニムに長袖シャツでリュックを背負っていました。
年のころは40代、ってとこでしょうか。

唐突に視界に入って来られたので、思わず返事をしてしまったのですが、かなり独特な方で物凄い早口。
そして身振り手振りが大きい。



「あの僕は東京から来たんですけど3週間ぐらいこっちにいるんですが元々はこっちの出身なんですよそれで今とても困っているんですごめんなさいね病院の帰りなのに声を掛けちゃって」

一気に言いつつ、両手を合わせて拝むポーズを何度もなさるんですね。
凄い早口を聴きとる方に集中して立ち止まっちゃったのが、多分、脈アリと思われたんでしょうねぇ。

「……はぁ」

取り敢えず曖昧に返事をして、病院ってなんだろう、と考えました。

「それでちゃんとね住所と名前も書きますから安心してもらって大丈夫です僕必ず返しますんでそこは信用してもらって大丈夫ですから」

彼の話は全然スピードを緩める気配もなく続いてまして、一生懸命何かノートを取るような仕草をしていました。

聴きながら、ああ、そう言えば今登って来た坂の下には大きな病院があるなぁ、と思い至って。

つーか、病院の位置関係分かってるなら地元の人じゃん? そしてどうして私が病院から来たと思うのだ?
え、この人、なに?

「…………」

「ちょっと僕もいろいろとワケがあってここを歩いていたら今丁度奥さんがいらしたので天の助けだと思って声を掛けたんですよね奥さんどうでしょうかお願いしたいんです僕とても困ってて助けて欲しいんです」

奥さん……。
もしやこれは、新手のナンパ……?

つーか、この人気弱そうに見えて随分押しが強いな、と思いまして。

「……で? 何なんですか?」

少し強く言うと、彼は早口で端的に答えました。

「500円貸してください」



まぁ、そうよね。
ナンパはされないですよ、うん。
朝9時台だしね。

って、そう言う問題じゃなーい!!(笑)


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