
不埒に淫らで背徳な恋
第10章 【不埒に淫らで背徳な愛なら許されるのでしょうか?】
しどろもどろで説明を再開する。
身体が熱くなる衝動に駆られた。
薄暗くとも目は合っていた。
真っすぐ私を見ていた気がする。
何食わぬ顔して一番後ろの席に着いた彼。
待って……講義を受けるの?
必要ないしそんな時間に余裕あるとも思えない。
何とか自分の出番は終えて交代する。
前の席に受講者の方を向いて座る形だが、一切顔を向けれなかった。
照明が戻ったら余計に視線を感じる。
心臓が暴れてる。
どうにかして講義を終えたら控室に戻ろう。
すぐにでもここを出よう。
東京に帰ろう。
大丈夫、平常心。
今は講義中よ。
堂々としなければ。
選ばれし講師なのだから。
「あの、今日は先に退社しても宜しいですか?」
終わる間際に講師仲間にそう伝えると、仕事だと思われて快諾してくれた。
受講者が退室していく中、一人立ち上がりこっちに向かってくるのがわかると踵を返し逃げるように自分も出て行く。
追いかけて来ないで。
まだ廊下には受講者がチラホラと居る。
曲がり角に差し掛かった時に腕を掴まれた。
「やっ…!」
ビクッとした身体が拒否反応を示してる。
そのまま近くの扉を開けて連れ込まれた場所は非常階段だった。
誰も居ない踊り場でもろとも再会を果たした彼は久しぶりにあの声を聞かせてくれた。
「瑠香さん……」
振り払わなければならない手が動かない。
鼓膜を通じて脳にくる声は心を掴んで離さない。
久しぶり過ぎて涙腺が緩む。
何を期待しているの…?
「離して」の一言が言えない。
フワリと包み込む懐かしい香り。
変わらず逞しい腕に抱き締められ「あ…」と声が漏れた。
目を閉じて噛み締めてしまう。
この温もりにずっと包まれたかった。
ずっと欲しかった。
足りなかったピースが埋まっていくようだ。
「会いたかった」と言われたらもう溢れ出た。
同じ気持ちで居てくれたことが心底嬉しくて不覚にも舞い上がる。
再び見つめ合ったら終わりだ。
泣き顔見られたくないから背けたのに頬を包み込むからまたその瞳に捕まってしまう。
