不埒に淫らで背徳な恋
第9章 【無い物ねだりの先には報復だけでしょうか?】
__はい
掠れた声だったけどどうにか返事は出来た。
電話だと顔が見れないから今どんな顔なのかはわからないけどいつも通りの声で安心して目頭がまた熱くなる。
__欲しいものあるだろ?買って行くから何が良い?
何もなかった体でいくんだ……?
どこまで優しいんですか。
私は…?どうするべきですか…?
有耶無耶には出来そうもないです……
__ごめんなさい……何もいらないです
消え入りそうな声も上擦り、最後は嗚咽となった。
悟られないよう必死に抑えるも次に繋がる言葉が出てこない。
__ゼリーなら食べれるか?食えてないんだろ?少しでも何か入れないと。もう少し待ってろ、買ってくから
__もう会えません……
__そんな悲しいこと言うな……
__だって……私っ……!
__とにかく行くから、後でな
そう言って一方的に切られた。
そんなこと今まで一度もなかったけど今回は強引に終わらされた感覚。
電話で話すことじゃないしましてや運転中だったと思う。
会えないなんて自分勝手だな。
とことん自分が嫌になる。
落ち着いて話せるだろうか。
泣いて話せないかも知れない。
それも卑怯だよね。
最後は泣き落としなんてズル過ぎる。
春樹さんが来るなら…と一日中着ていた部屋着を着替えた。
鏡に映る自分は何だかやつれているようにも見える。
すっぴんだけど色つきリップくらいは塗っておこう、血色が悪いとまた心配をかけてしまう。
少し動いただけでまだクラクラしてる。
朝から何も食べていないのに全然お腹が空かない。
食べなくてもどうにかなるんだな。
人間は意外としぶとい。
そうこうしているうちにインターフォンが鳴り、春樹さんが買い物袋を提げてやって来た。
どんな顔をしたら良いのか。
恐る恐る見上げるといつもの優しい眼差しが向けられていた。
「昨日よりかは顔色が良いな?安静にしてたか?」
髪を撫でられ靴を脱ぐ。
うん……と頷く私にニッコリ微笑む春樹さん。
たくさんあるゼリーの種類、全部を買って来るところはやはり社長気質。
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