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蜃気楼の女

第1章 再会

 午後1時30分、ハイエースを運転する児玉進一は、配送品を乗せて、国会議事堂を目指し走らせていた。車は交通規制とデモ行進の人垣で納品時間に間に合いそうにない。仕方なく、児玉は車を路肩に止めた。
「っあーあーー  着いたの?ーーー 進ちゃん」
 助手席に座ってうたた寝していた安田尚子が甲高い声を上げた。児玉が隣の尚子に顔を向けると、尚子は大きく両腕を上げ、豊満な胸を前に反らして、大きな口を開けてアクビをしていた。すらりと伸びた美脚と、つま先を狭い車内で斜めになりながらも前に伸ばそうと、もがいた。その時、ミニスカートが足の付け根までまくれ上がり、ブルーのパンティーが丸見えになった。児玉は尚子の妖艶なまでの若さが溢れた姿態に目を奪われた。
 若さが溢れる尚子の肌は、白く透き通っているように見えた。生気に満ちた肌に、児玉は心臓が大きく脈打ち、速まった。狭い車内で腕を上げていた尚子は顔を児玉に向け、児玉の視線の先に目を向けた。寝起きの呆けた尚子の顔は瞬時に豹変した。
「ああっあーーー」
 と素っ頓狂な大きな声を上げて素早く腕を豊満な胸に引き寄せて体をすぼめると、右手をスカートのまくれた裾を引っ張って伸ばした。気持ちを落ち着けるように、息を吸うと、恐る恐る言葉を選びながら話した。
「…… ねえ、進ちゃん、今、あたしの、見ちゃったよね? 絶対、見たよね? もう、何度となく、あたしのここを見ているよね? まだ、思い出せない?」
 そう言い放った尚子は、しばらく顔を下に向けて考えている。やがて、固まっていた体を解いて、ようやく顔だけ児玉にゆっくり向けて来た。
「ああ、嫌だー! 進ちゃん、あたしの色香に負けて、覆い被さって、強引にキスしようと、思ったでしょ?」
 そう思ったなら、無防備に寝るんじゃない、と思いながら、何を訳の分からないことをこの子は言っているのだと思った。
「だから、いつも、配達の日はミニスカは止めてって言ってるでしょ?」
 尚子は児玉に向けていた顔を自分のスカートに向けた。
「アア- やだー これ? ねえ、進ちゃん、今まで、何度も見ているのに、欲情しないの? こういうの、嫌い? そうなの? それでも男なの?」

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