
お面ウォーカー(大人ノベル版)
第6章 ヒーローがいるなら、これもいる。
その頃、良夫はお面を手に商店街を歩いていた。
パラパラと季節を無視した粉雪が舞う中、アーケードの無い商店街をヒマラヤ登山でも行くかのような厚着でうろうろと彷徨う。
「たしか、ここにあったけどなぁ……」
良夫は、ある店を探していた。しばらく歩くと、それは見付かった。
そこは、骨董品屋だった。
木造建てで、中はやや薄暗く、焼き物や掛け軸、木像等が並んでいるのが見える。
ガラスの引き戸を開けると、カラカラと音がする。
「はい、いらっしゃい」
毛糸の帽子を被り、赤いセーターを着た高齢の男性が出てくる。
良夫は、お面を出すと、「これって、価値ある?」と店主に差し出した。
店主はお面を受け取ると、眼鏡をかけ「これですかぁ……民芸品ですなぁ」と裏表を確かめた。
良夫はお面を指差し、「このお面の良さは、ここからです。顔にはめてみてください」と言った。
店主は言われた通りに、お面を顔にはめてみるが、すぐに離した。
「あ、チクショー、またか」と良夫は残念そうに言う。
店主の顔に、貼り付くと思ったのだろう。
以前、会社の先輩である定年間近(さだとし かんきん)が顔にはめた時も貼り付かなかった。良夫にとっては、悔しい2連敗だ。
店主は、お面を手に、「これだと、二千円だね」と静かに言った。
「え、買い取ってくれます?」
良夫が恐る恐る聞くと、店主は目を細め、
「あぁ、構わんよ」
良夫は、嬉しさのあまり、拳に力をこめた。
とにかく買い取ってくれれば、値段はどうだってよかった。ただ、ちょっとは期待したが、予想よりは150円高かった。
パラパラと季節を無視した粉雪が舞う中、アーケードの無い商店街をヒマラヤ登山でも行くかのような厚着でうろうろと彷徨う。
「たしか、ここにあったけどなぁ……」
良夫は、ある店を探していた。しばらく歩くと、それは見付かった。
そこは、骨董品屋だった。
木造建てで、中はやや薄暗く、焼き物や掛け軸、木像等が並んでいるのが見える。
ガラスの引き戸を開けると、カラカラと音がする。
「はい、いらっしゃい」
毛糸の帽子を被り、赤いセーターを着た高齢の男性が出てくる。
良夫は、お面を出すと、「これって、価値ある?」と店主に差し出した。
店主はお面を受け取ると、眼鏡をかけ「これですかぁ……民芸品ですなぁ」と裏表を確かめた。
良夫はお面を指差し、「このお面の良さは、ここからです。顔にはめてみてください」と言った。
店主は言われた通りに、お面を顔にはめてみるが、すぐに離した。
「あ、チクショー、またか」と良夫は残念そうに言う。
店主の顔に、貼り付くと思ったのだろう。
以前、会社の先輩である定年間近(さだとし かんきん)が顔にはめた時も貼り付かなかった。良夫にとっては、悔しい2連敗だ。
店主は、お面を手に、「これだと、二千円だね」と静かに言った。
「え、買い取ってくれます?」
良夫が恐る恐る聞くと、店主は目を細め、
「あぁ、構わんよ」
良夫は、嬉しさのあまり、拳に力をこめた。
とにかく買い取ってくれれば、値段はどうだってよかった。ただ、ちょっとは期待したが、予想よりは150円高かった。
