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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第5章 その顔で歩く

すぐさまてっちりの注文を、キャンセル。

「おばちゃん、おあいそして」と長谷川は、代金を払う。ナポリタンスパゲティが普通料金での請求になっていたことに、胸を撫で下ろした。

だが、ケーキとマロングラッセの料金を取られたことには、納得がいかなかった。

店を出て、二人は改めて看板に目を移す。

“一品、小料理、居酒屋詩子”

「看板に偽りありやな。なにが小料理やねん」と長谷川が舌打ちをする。

「なんや、もう来まへんの?」

「おもろいから、また来るわ」

「気にいってまんねがなぁ~、ほな帰ります。ごちそうさーん」

良夫は、手を上げて去っていく。

「おう、お疲れさん……いや、俺が全額出したままやん」

携帯電話の時計を見れば、午後8時半。フラフラとほろ酔いながら、吐く息が白くなる街中を歩いていく。

ふと立ち止まり、夜空を見上げる。

「なんでこんな寒いんやろなぁ~、あと二週間もしたら五月やで」

少し欠けた月を眺め、再び歩こうとするが、なにやらポツリと空に浮かぶ物体が視野に入った。

「ん?」

老眼の入った目を細める。それは、ゆっくりとこちらに向かっているようにも見えた。

良夫は気になり、それがなんなのかギリギリまで見ていることにした。

隕石等の、危なそうな物体でないことを祈りつつ、行方を確かめながら、移動をする。

「おいおい、なんやねんあれ……」

それは、どう見てもこちらに向かってきていた。

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