『宅配のお兄さんにどんどん逃げ場を無くされるはなし』第5章「逃亡」　21ページ

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宅配のお兄さんにどんどん逃げ場を無くされるはなし

第5章逃亡

「じゃあ、おやすみ」
航大さんは私のマンションの前まで送ってくれた後、手を振って去っていった。

私はその姿を見送ってからマンションに入った。
いつものように、宅配ボックスを開ける。

「痛っ」私は声をあげた。手の先に何かが刺さったようだ。
瞬間、宅配ボックスから手を抜くとやはり刺さっていた。
「棘だ」

私は宅配ボックスを覗くと、そこには1本の真紅の薔薇が入っていた。
無理やり詰め込んだようで、少し花びらがちぎれている。

刺さった棘の感じからしても造花じゃない。
誰かのイタズラかな？

私は綺麗な薔薇を手に取ろうとした。
しかし、その薔薇に手を近づけるほど何だか不吉に思えてくる。
私は良くないとは思ったけれど、その薔薇を宅配ボックスに放置したまま立ち去った。