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放課後は、ヒミツの待ち合わせ。(R18)

第7章 初夏とカップケーキ

人気の少ない渡り廊下。


青井先輩の少し後ろを歩くと、立ち止まってのんびりと待っていてくれた。


隣にたどり着くと、青井先輩の顔はあたしの髪に寄せられて。


「な……、なんですか……?」


髪を抑えて、眉根をよせながら見上げると、



「色葉ちゃん甘い匂いする。調理実習だった?」



ふんわりと頬を緩める先輩は、あたしの握る色気ゼロのポリ袋を指さしてから、パチンと両手を合わせた。


「受験勉強で糖分欲しい俺にちょーだい!」



整った顔立ちの下、無邪気に笑う先輩は、かっこいいと可愛いの間、みたいな。ほんとうにモテそうなひと……。


あたしはうつむきながら、言葉を紡ぐ。


「……受験勉強大変ですよね」


「毎日10時間くらい勉強してるからねー。ご褒美ほしいなぁー、なんて」



だったら、渡そうかな。


別に誰にあげるわけでもないし。



「だけど……ポリ袋で大丈夫、ですか?」


おずおずとポリ袋を差し出した瞬間だった。


「ひゃあっ!」


まるで鳶(とび)のような速さでポリ袋が誰かに奪われた。



いつの間にかあたしと先輩の間に割り込んでいたのは、澄くん。



あたしは目をぱちぱちとさせながら、高鳴っていく心臓を感じた。


「先輩しつこいですねー」


「またお前かよー! 色葉ちゃんこいつなんなの!?」


「姫路色葉は俺の双子の妹です」


えっ、と声が出そうになった。

なんて突拍子もない一言なんだろう。


ぽかんと澄くんを見上げていると。


「双子って……まじ!? たしかに顔面偏差値は近いものがあるけど……。苗字違うのは家庭の事情的な?」


先輩は驚きの声をあげるから、あたしまで驚いちゃうよ。


「そうです。だから俺の妹に手ださないでもらえますか? 妹を守れって、じいちゃんの遺言なんで」


「……そ、そ、そうかぁ。じゃあまずは兄ちゃんを口説けってことかなー? じーちゃんの遺言、ねぇ……」



どうして先輩は信じてしまうんだろう。


ぜったいにおかしな話なのに。



「まぁつまり。出直してください。センパイ」


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