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狼からの招待状

第3章 火影

茶いろの髪に、青い目のまだ若々しい神父が、説教のあと呼びかけると、信者たちの間から、囁きが起こった。
 「主よ。兄弟のように、近い聖教会の悲しみを、我々は自身の苦痛と受け…」神父の祈りの言葉に、礼拝堂は静まる。
 「天国の門は罪人を癒し、全ての悪を幻にと開かれ…」隣の微かな身動ぎ─、清々しい、若草の香り…ジャスミン。
 見ると、熱心に聖書のページを読むように、口もとを小さく動かしている。
 (真面目だから…可愛い)ユノの右隣には、フライ。ジャスミンの向こうにグレが掛けている。
 「哀れな魂を導き、哀しき罪人を許し、主と共にいる悦びを…アーメン」オルガンが鳴り、会衆は皆、立ち上がって、『Rock of ages(ちとせの岩)』を歌い始める。
 窓辺のカボチャたちも、歯を剥き出した口で、合唱に加わっているかのよう……オルガンの音が止み、神父が「明朝月曜日の万聖節のミサ。ご都合よろしければご列席ください」その挨拶が終わらないうちに、別棟に通じるドアから、子供たちが飛び出してきた。
 手にしたお菓子の袋を、両親に見せたり、出窓のドラキュラのぬいぐるみに駆け寄り、抱き上げる幼い女の子もいる。

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