
狼からの招待状
第2章 霧魔
乾いた音がアラベスク(唐草模様)の上を走る。1の目。銅板画のような灰いろのカードをフライが返す─ハートのK(キング)。「俺もキングを出す…」云いながら放るダイスはまた、6の目で止まり、カードはダイヤのJ(ジャック)…。
深呼吸したユノは、慎重にダイスを─(あっ)カウンターを逸れて、床を転がってゆく…カードも一枚だけ、下に落ち─拾うとスペードの、女王…からころと転がる音が急に止み─チャンミンがダイスを手のひらで弄び、ユノを見下ろしていた。
(チャンミン)唇を嫌みたらしく曲げて、「オレとも勝負しない?」「オソォセョ。失礼しました」フライは手早くカードをひとまとめにする。
「愽才だけはあるのに─」ポイとごみでも捨てるように、ダイスをカウンターに向かって投げた。空中で受け取ったグレに、「でしょ? フライの兄貴…は」いやらしい嗤いに、厚めの唇を動かした。
「チェン兄き」小肥りの中年男が、後ろから声を掛ける。カウンターから目を離さず、引かれた椅子に座った。その両脇に、中年男と眼の小さい若い男が座る。
深呼吸したユノは、慎重にダイスを─(あっ)カウンターを逸れて、床を転がってゆく…カードも一枚だけ、下に落ち─拾うとスペードの、女王…からころと転がる音が急に止み─チャンミンがダイスを手のひらで弄び、ユノを見下ろしていた。
(チャンミン)唇を嫌みたらしく曲げて、「オレとも勝負しない?」「オソォセョ。失礼しました」フライは手早くカードをひとまとめにする。
「愽才だけはあるのに─」ポイとごみでも捨てるように、ダイスをカウンターに向かって投げた。空中で受け取ったグレに、「でしょ? フライの兄貴…は」いやらしい嗤いに、厚めの唇を動かした。
「チェン兄き」小肥りの中年男が、後ろから声を掛ける。カウンターから目を離さず、引かれた椅子に座った。その両脇に、中年男と眼の小さい若い男が座る。
