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狼からの招待状

第4章 迷路 -MIROH-

カッチャ(急に)唄い出すフライ。「『朱蒙(チュモン)』だ。“世界が私を呼んでいる”音程違う」「チュモンは、扶余(プヨ)の悩み多き王子様なの…」ごろりとソファーに寝転んだ。「韓半島初代王。旧約聖書の世界観なドラマ」「紀元前─大昔の話だから、神話だ」「超古代の夢でしょう。『輝くか、狂うか』もロマンチック。渤海最後の王女」
 フライの傍らのソファーの背に凭れる。蒼い海が映し出される画面を見つめた。紀行番組のようで、ゆったりしたナレーションが流れ始める。  「フライ。もっと史劇語りましょう、…僕は明日ソウルに行く。ユノ先輩に大事な話で」「私の名は一枝梅(イルジメ)」 それだけ云って目を閉じ、Gパンの脚を組みかえた。「…イルジメの最後は─?」「靴が2足届く」「死ぬ前に、頼んだのかな」「くたばりそうにない、美賊だけどな」 
 TVのナレーションが海の潮の音─「『王になった男』も、道化師が生きてて踊って…王妃の夢かな」「王妃も亡くなった? これも最後がわからない」「フライがマスターから映画版を借りてきた。それもラストは夢…」 フライが顔を横向けて、寝入っていた。
 青空に白い帆を映すTVを消し、フライをベッドに運ぶグレ。

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