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ぼっち─選択はあなたに─

第26章 黒い犬【選択8】

 ヒカルはさっき本の中身を見た時のアクアの表情がすごく気になっていた。
 しかし用事があるなら邪魔していけないと思い、とりあえずレイナの宿屋に戻ることにした。

 レイナの宿屋に戻る途中、普段は夜しか見回りしないはずの討伐隊員が二人一組になって見回りしているのが目に入った。
 さっき現れた黒い犬に化けたシャドー対策だろう。そのせいか、町には緊張感が漂っていた。

「ヒカル!」
「クロード?」

 バットと一緒に歩いていたクロードがこっちに気づくと声をかけてきた。

「さっきプジョーから聞いた、修道院で黒い犬に襲われそうになったって……大丈夫か?」
「大丈夫、プジョーさんが退治してくれたから」
「最近、シャドーの動きが活発になってきてるんだ。夜だけじゃなく、昼間にも出るようになってきた。だからなるべく一人で出歩かないでほしい、何かあったらすぐに呼んでほしい」

 クロードが心配そうな表情で見つめてくる。

「うん……わかった」

 ヒカルの頬が少し赤く染まる。
 こうやって二人で話すのは久しぶりのような気がする。

「こうやって二人で話すのは久しぶりだな」
「えっ?」

 今ちょうど思ったことをクロードに言われて、ヒカルは動揺した。

「何か困ったことはないか?」
「えっ……あ、何もっ……」
「そうか」

(どうしよう……すごく嬉しい。まさかクロードも同じことを考えていたなんて……)


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