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はるのかぜ

第4章 ハルの心は曇り空

思わぬことで塾を辞めることになったハルは、すべてにおいてやる気を失いかけていました。そして、何よりも仲のよかった有紀や愛に何も言えずに塾を辞めることになったのが、ショックでなりませんでした。

その頃、塾でも有紀と愛は同じような思いをしていました。

「美輪先生、内海さん、最近見ないけどどうしたの?」

有紀が尋ねます。

「内海なら辞めたよ。」

驚いた愛は言います。

「先生、嘘言わないで!」

「嘘やないっちゃ!」

美輪先生のその返答に有紀も愛も冗談ではないことを察しました。

ハルは毎週、塾に通っていた曜日が来ると、有紀と愛が今頃何をしているのか気になって仕方ありませんでした。仲良くなってはいたものの、お互い連絡先を交換している訳ではなく、連絡を取る手段はありません。

辛いながらも、ハルは任されたことをやらないということは嫌いで、弥生に言われた通り、卓造の入院する病院には度々訪れました。

「おじいちゃん。」

「おぉ、ハルか。また来てくれたのか?」

「うん。容態はどう?」

「ちょっと傷口がまだ引きつる感じがするなぁ。」

「そうだよね。まだ手術、終わったばかりだもん。無理しないで、ゆっくり治さないと。」

「ありがとう。」

ハルは卓造の前では、自分が今辛いということを気付かれまいと必死に明るく振る舞っていました。しかし、ハルの心の中は常に曇り空でした。塾を辞めさせられることになって以来、弥生とハルの間に会話はありません。

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