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はるのかぜ

第1章 教師を目指す第一歩

1988年3月28日、この世に一人の少女が生まれました。春真っ只中に内海(うちうみ)家に誕生した新しい命。そんな季節を意識して、両親は彼女に「ハル」と名付けました。ハルはいつも前向きで、周りの人を元気にする力を持っていました。この物語は、そんな少女、内海ハルがずっと抱き続けてきた夢を実現し、彼女に春がやって来るまでの長い道のりを描きます。

2000年4月、ハルは公立中学校山一(やまいち)中学校に入学しました。中学生になってもハルの性格は何一つ変わらず、いつも明るく元気に過ごしていました。特に給食の時間は、彼女のお人好しさが見受けられました。同じクラスの大沢五月はハルの元へ駆け寄ってきて言いました。

「ハル!今日のデザートのゼリー、私にちょうだい。」

「いいよ!ちょうど私、今日はお昼の放送当番だから、ゆっくり食べてる暇なくて。」

「ありがとう。このゼリー大好きで、2個ぐらい食べたいなぁって思ってたの。放送当番の日、ゆっくり食べられないんだね。じゃあ今度から放送当番の日はデザート私に譲って。」

「うん、いいよ!」

ハルは放送部に所属していました。なので週一回、校内放送のため給食の時間中に抜け出さなければなりませんでした。その為、給食についてくるデザートはいつも五月に譲っていました。しかし、ある日のことです。五月とのやりとりを知っていた佐藤真美はたまたま自分が好きなプリンがもうひとつ欲しいがために思いきってハルに声を掛けます。

「ハル!そのプリン、私に譲って貰えたりしない?」

「あっ、これ?いいよ。」

「やったぁ!ありがとう。」

真美はプリン片手にその場から去っていきました。

数分後、いつものように五月がやって来ました。

「ハル!今日はプリンをちょうだい。」

「ごめん。今日は先客が居たの。来週の給食のデザートはあげるから楽しみにしてて。」

そう言って、ハルはその場を去っていきました。

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