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第3章 幼なじみ




電車のドアが閉まり、次第に冷静さを取り戻してきた。


〈しばらく乗車時間をずらさなきゃ…。〉


また痴漢男に狙われるかもしれない。


次にターゲットになった時、はたして逃げられるだろうか?


〈もっとエスカレートするかも…。〉


菜乃は考えを巡らせた。


電車が減速しホームに入る。次の停車駅だ。


ドアが開き乗客が吐き出される。


菜乃が下車したその時、



「菜乃!」



左手首を掴まれた。


「青斗?」


青斗が同じ車両内から出てきた。


「朝練は?」


菜乃は驚いて尋ねた。


「今日は急遽休みになってさ。」


青斗はバスケ部員だ。背も高く爽やかなルックスで


女生徒のフアンも多い。


菜乃はただの幼なじみとしか思っていない。


「あのさ、さっき…。」


菜乃は心臓の鼓動が大きく鳴っているのを感じた。


〈まさかさっきの知ってる…?〉


「な、何…?」


菜乃は慌てて聞き返した。


「…いや、すげえ臭いオッサンがいてさ。」


菜乃は拍子抜けした。


「マジで死ぬかと思ったけど満員で動けなくてさ。」



〈良かった…。見てなかったんだ。〉



菜乃は胸を撫で下ろした。


「菜乃のところまで行きたかったんだけどさ。」









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