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徒然に。

第9章 KLEIN kino

「違う。気分が良いんだって♪」

腕の中にこいつを閉じ込める。

「……………何?怒ってるんじゃないの?」

焼ける度にからかう俺のせいでやはり勘違いをしていた様だ。
多くを語らない、加えて口下手な俺。
コンプレックスから嫌いなはずのこいつに癒しを感じたのはいつからだったろう?

「また俺が悪酔いしない様に見張ってなよ。気分が良いからさ」

俺のせいで中途半端な焼け方をしがちなこいつに、いつまで通用するだろう?
腕の中が暖かいことに癒されてる事実。

「…………………今日雨降るの?……………昨日シゲに言われたけどさ、今日は訓練で大変なんだよ?」
「知らない。そんなの。俺の気分が良いんだから晴れるよ?」
「………………うん。ケイ言ってた。俺の心配してたって。ホントだったんだね?」
「してない」
「うん♪」

こいつを腕の中に閉じ込めて眠るのが一番の特効薬、それに気づいたのはいつからだろう?
変わらぬ細い身体に清々しい魂宿したこいつは常に前向きでやいばに立ち向かう。
俺は後方。それで良い。俺のせいで中途半端な制限をかけられるのはもうまっぴらだ。
そう思った俺にいつだって時間をくれるこいつ。
腕の中に閉じ込めるのは今だけと解ってて、でもこいつは逃げない。俺から。

「おやすみ、タカ」

サラサラと髪に触れる。苦手なはずのその行為に違和感無いと気づいたのはいつからだろう?
仰向けでないと寝れないのに横向きで寝れると気づいたのはいつからだろう?

こいつのいない時間が退屈だと思ったのはいつからだろう?



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