その恋を残して
第3章 私と、蒼空の秘密
※ ※
気がつくと俺は、自分の部屋にいた――。
話を終えた後、沢渡さんは車で俺を送ってくれていた。けれど、正直その間のことは良く覚えていない。
蒼空と怜未の秘密の全てを聞いて、でも俺はその全てを受け入れることができてはいない。沢渡さんが嘘を言っていないことは理解している。それなのに俺の方は、それを事実として受け止められない。そしてあれから、自分の中で何度も自問している。
あり得るのだろうか? 一つの身体を二つの意識が共有する――本当に、そんなことが……。
俺は力なくベッドに倒れ込む。頭の疲弊が全身に拡がったかの如く、立ってさえいられなかった。そうして枕に顔を埋めながら、漠然と思う。
こんなことで明日、どんな顔をして蒼空と会えばいいのだろう。
ギュッと目を閉じた時、俺の脳裏に涙を流した帆月蒼空の顔が浮かんだ。俺の中の彼女は、今でも泣いたままで。彼女を悲しませた俺が、こんな調子でいいわけがなかった。
そして、次に浮かんだのは帆月怜未の顔。それは、俺を信頼して事実を伝えることを決めた時の顔だ。
二人は数奇な運命を懸命に生きている。だったら、俺はそれを受け入れなければ、二人の前に立つ資格を失ってしまうのかもしれない。
俺はくるりと身体を反転させ、両目を開き天井を見つめる。
そして、沢渡さんから聞いた話を、もう一度思い返すことにした。それが、今の俺に出来る、せめてもの決意の表れのような気がして――。
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