
兄弟ですが、血の繋がりはありません!
第2章 朝だって時には戦場になる
智希side
『智にぃ!行っちゃやだ!』
学校に出かけようとする度、そんなことを言っては泣いてくれていたのはいつだっけ。
あの頃はまだちぃちゃくて、もっと細くて、簡単に閉じ込めてしまえそうだったのに。
今は、
「しんっじらんない!普通あれで絵描けるか?!
結局20分もあのままだったよな!」
兄に暴言を吐くほど、大きくなっちゃって。
「ごめんて」
誰かが怒っている顔って普段と掛け離れているから、割と面白くて好きだ。そんなことを思いながら悠の言葉を聞いていたら、ふにゃり。思わず表情筋が緩む。
「笑ってんじゃねぇ」
「あう…酷いよ悠。兄の頬にラップの芯を刺すなんて」
「穴があかなかっただけ有難いと思え」
まーったく、誰に似てこんなに乱暴な言葉遣いになっちゃったのかねぇ・・・。兄は心底疑問だよ。
「・・・智にぃのせいでベーコンエッグが冷めたんだけど。折角半熟だったのをあっため直したからカチカチだし」
チンしたベーコンエッグをレタスで包みながら、悠はオレを睨む。だけど、食べ物の話が出来るということは、本気では怒っていないな?
「…悠のごはんはどんなだって美味しいよ?」
「・・・本当に?」
「うん、いつもありがとうね」
「ん…」
顔は変化なし。だけど横から見える耳が真っ赤。
もう一押し、もう一押し♪
「智にぃ、」
「なに?」
「これ、鶫くんもね美味しいって…だから、口開けて?あーんして・・・」
おお?お?お?おおおおおおお??
「あ、あーん・・・(モグモグ…)
って辛ぁあぁあぁああ!!なにこれ?!」
「引っかかったな。これだよ」
悠の手には某動画サイトでよく見かける骸骨のチャームがついた、真っ赤な液体の入った瓶。
「死のソース!!・・・ゲホッ、うぇ、うわ、ちょっと牛乳は?!無いんだけど?!」
「さっき鶫くんに珈琲牛乳作ってあげたからないよ?」
「さも当然のように!…ゲホッゲホッ!」
「智にぃ?」
「ゲホッ・・・ん?」
「し・か・え・し♪」
悪魔がいた。
