テキストサイズ

注射、浣腸、聴診器、お尻ペン。

第16章 精神科 急性期閉鎖病棟

長い1日が終わり、やっと消灯。夜。





眠ってしまえば楽になれる。





だけど、神経が高ぶっているようで上手く寝つけない。






右隣の覚醒剤患者さんが騒いでる。

左隣の覚醒剤患者さんが泣いている。




『静かにして。静かにしてよっ。
眠れない。眠れないっ。』





私の声も段々大きくなっていき




『助けて。誰か助けて!ここから出して。誰か!お願い、ここから出して!』




と、何度も何度も叫んでいた。





もう自分を押さえることが、できなかった。






しばらくして、トントンとドアをノックする音がして保護室の電気がついた。




涙目で顔だけそちらを向けると、桜庭先生と成井さんが立っていた。





「夜中に騒がないで」桜庭先生は冷たく言い放った。





「保護室で騒いだら注射だってさっき言ったよね?」





『違うの…』





「違わないでしょ」





『私はただ、眠れなくて』




「眠れないときは追加の睡眠薬があるって成井さんから聞いてるはずたけど。約束守れなかったから注射しようね。成井さん、準備お願いします」






「はい。美優ちゃん腕まくるね」





『いやだっ。注射こわい』




「成井さん、しっかり押さえてて下さい」





『先生、やめて。注射はやめて』





先生が金属製のトレーから取り出した注射器は、とても大きくて針も長くて太かった。





『やだっ。やだっ。こわいっ。静かにするから注射はやめて』





「酷く興奮してるみたいだから注射打って休んだ方がいい」と言いながら、二の腕をアルコール綿で消毒された。





「チクッとするよ」





長い針は、二の腕の筋肉層まで深く食い込み






「足先痺れてない?薬液が入るから痛いよ。頑張ろうね」





私は、余りの痛みで『ぎゃあーー』と叫んだ後、すぐに意識を失った。







ストーリーメニュー

TOPTOPへ