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たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―

第1章 杉並実果留



「こんなことを聞いてくれて、ありがとうございました。おかげで少しスッキリしました。
 それじゃあ……失礼します」


 夕崎君がホームの階段に向かおうとしたところを、私は――


「……待って! 夕崎君っ!」


 思わず呼び止めてしまった。

 私は、何をしようとしているの?


「……はい。何ですか?」

「あの……違うの」

「え?」

「あの男子は……彼氏じゃないんだ」

「え? 違うんですか?」

「うん……あの男子は、ただの幼なじみ」

「あ、そうでしたか……」


 意に反して……じゃなくて、意のままに、口が自動でパクパクしているみたいな感覚。


「だから……その……」

「……はい?」


 こんなの、絶対に良くないってわかっているのに……

『武の気持ちが、どうしても知りたい』

 その想いの方が勝ってしまって、私の口はどんどん動いていく。

 良くない。でも知りたい。いやダメ。良くない。良くない。良くないっ。

 でも……でも――




「……私で良ければ……よろしくお願いします」






「…………えっ?」


 軽くお辞儀をする私に、夕崎君は目を見開いた。


「夕崎君の気持ちに……答えたい……です」


 い……言っちゃったし……。


「えっ? だって……いいん……ですか?」

「……うん」


 って……本当にいいの? 私……。


「えっと……す、すみません。まさかこんな展開になるなんて思ってもみなくて……なんか、どうしていいか……」


 なんか困らせている?


「あ……ごめんね。つき合うまでは……したくない?」

「い、いえっ! 決してそんなことはっ!」


 夕崎君は、首をブルブルと横に振った。


「自分は、本当に『彼氏がいる』と思い込んでいたので、つき合うなんて頭がなかっただけです!
 もし、つ……つき合えるなら……つき合いたい……です」


 夕崎君、また顔が赤くなってる。


 それが、私の罪悪感をより強くさせる。


 あぁ……私って、ホントにヒドい。


 自分のエゴで、こんなに純粋な人をたぶらかすようなマネをして……。


 けど、ここまで来たら、もう後には引けない。


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