Memory of Night
第3章 秘密
「宵! 一緒に帰ろう!」
病院を出て、数十メートル行ったところで突然晃の声がした。
宵が振り返る前に、晃は隣に来て並ぶ。
「……病院の見学しに来たんだろ?」
「でももういいや」
晃はあっさりと言って笑う。
「だからって、なんでおまえと帰んなきゃなんねんだよ?」
「広い世の中病院で会うなんて運命だろ? だから、一緒に帰ろう?」
「意味わかんねぇし。どーゆう理屈?」
「俺、この辺の道よくわからないんだ。だから知ってる道に出るまでついてく」
辺りを見回しながら晃は言う。
だったら一人で来るなよ、とも思ったが、確かにこの辺りは細い道が入り組んでいて迷いやすい。
宵はしかたなく、隣にいることを許して歩き出した。
二人とも、しばらく無言で歩いていたが、ふいに沈黙を破り晃が口を開いた。
「君が金を貯めてるのって、あのお母さんのため?」
「……」
宵からの返事は返ってこない。
晃が横目でちらりと宵の様子を窺うと、宵はどこか迷っているような表情をしていた。
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