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Memory of Night

第8章 花火


 まだ笑っている。宵の無防備な笑顔は珍しくて、なんとなく見とれてしまう。


「笑いすぎだよ」

「お前が変なこと言うからだろ」

「変なこと……言ったつもりもないんだけど。宵のことが知りたかっただけだよ」


 そこで宵は笑うのをやめた。探るように動く、灰色の瞳。


「知ってどーすんだよ、俺のことなんか」

「どうもしないよ。ただ知りたいだけ」


 晃の声は相変わらず穏やかだ。

 真っ直ぐに宵を見つめる晃の瞳。

 それは無理に諭すようなものではなく、優しく見守るような視線だった。

 宵の好きでいい。

 まるで、そう言われているみたいだった。

 晃に話すことに、抵抗は感じない。

 晃になら話してしまっても構わないんじゃないかと、自然と思えてしまう自分が不思議だった。

 宵は視線を再び地面に戻し、口を開いた。


「――あの人は……親父の浮気相手だったんだよ」

「浮気……相手?」

「そ。しかもたった一回きりの。……本当に、それだけの関わりしかなかったのに。親が死んだ日いきなり病院飛込んできて、俺のこと引き取るって言ったんだ」

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