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Memory of Night

第7章 夏祭


 宵に促され、晃がうーんと考える。

 ふと顔をあげ、言った。


「宵」

「じゃなくてモノ!」


 即答で怒鳴られ、晃は苦笑しながら腕を組んだ。

 視線を地面に落とし、今度は真面目に考えているようだ。


「――じゃあさ」


 顔をあげ、笑みを浮かべる。


「俺がやった髪飾り、祭が終わった後も捨てずに持っていてくれる? 大事にしろとは言わないよ。言える立場でもないしね」


 そこでふっと苦笑する。

 宵にはどこか、影を潜めた笑顔に見えた。


「……別に捨てねーけど。そんなの、なんのお返しにもなってねーじゃねーか」

「お返し貰うより、そっちの方がいいんだよ、俺には。宵には今まで金しか渡したことなかったし。プレゼントとは違うじゃん。……その金だって、母親のために使うんだろう? ……宵のもとには何も残らない」


 言いながら、どこか苦々しく感じるのはなぜだろう。晃はその気持ちには気付かない振りをして、言葉を続けた。


「いいだろう? 君に渡した髪飾りは、俺にとっての記念にもなるんだよ」


 最後にそう言い添える。

 宵はよく意味がわからないらしく、いぶかしげに眉をひそめていた。

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