
子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます
第4章 熱くなる体
二人で駅まで一緒に行って、別れて、一人暮らしのアパートに帰った。
鞄の中から鍵を取り出して、ごそごそしていたら、目の前に人影が立ちはだかった。
誰かと思えば涼くんだ。
「なんだ、お前今日も残業なの?」
「違うけど、藤原さんと一緒に、焼き鳥に行ったんだ」
あたしの言葉に舌打ちする涼くん。
「焼き鳥か、いいな~、俺も食いに行くか~」
うちのアパートの部屋の前から、くるりと背中を向ける涼くん。
「鶏肉あるから、作ってあげようか?」
「……いいのか?」
不意に真面目な顔になり、真っ直ぐに見つめられた。
……?
「だって…せっかく来てくれたんだし、どうぞ、上がって?」
香港に転勤に行く前までは、何度もうちに来てた筈なのに。
合鍵も持ってた筈だよね……?
久し振りだから、遠慮してるのかな?
黙ってうちに入る涼くん、ラグの上に寝転んで、テレビのリモコンを持っている。
「やっぱ、落ち着くな、この部屋」
スーツの上着を脱いで、ネクタイを外している。
台所の冷蔵庫を開けて、材料を取り出して、エプロンを着た。
「涼くんは今はどこに住んでるの?」
「見栄張って○○市のタワーマンション、将来を見越して購入したのはいいけど、落ち着かない、家具も対して揃えてねぇしな?」
○○市のタワーマンションて、
ひょっとして、誠也さんの住むマンションのこと?
だって他にタワーマンションて、
○○市にはないよね?
鶏肉を切りながら、フライパンに火をつけた。
「戻ってすぐに仕事だもんね?家具揃えてないと不便でしょ?」
「まあな、一人だとなくても構わないけど、面倒だしな、連れ込む女もいねぇし」
「……本当にいないの?」
香港に行く前は、彼女らしき人が居たようだったのに……。
「いねぇし、なにお前、気になるの?俺の事はもう諦めたんだろ?」
くすりと笑う涼くん。
……本人に言われると、ムッとしてしまう。
好きだった筈なのに……。
今のあたしの頭の中は、誠也さんのことでいっぱいだ。
不思議だな、子供の頃からずっと、好きだったのに……。
「そうだね?涼くんはやっぱりあたしにとって、お兄ちゃんみたいな存在だったんだろうね?ずっと、憧れてたんだ……」
鶏肉を切って、長ネギと、玉ねぎをフライパンに焼いて、
お皿の上に盛り付けた。
