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子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます

第8章 本当に好きな人




江藤彩音side


日曜日。

信じられないことに、とうとうあの桐生とお見合いすることになってしまった。

さすがは営業部の成績上位を常にキープしている男。

根回しは完璧で、両親まで口を揃えて、見合いに行けとうるさく言われて、

常務からまで両親に話がいってたらしい。


お母さんは桐生のお母さんと知り合いみたいだし、

お父さんは常務と友人だし、更に桐生のお父さんのことも知ってるようだ。


これはもう、断られる訳ないじゃない?


しかも大袈裟に着物まで着せられて、お母さんの友人の美容室でレンタルして、

成人式の如く、立派な装いになってしまった。



粋で大人な柄の訪問着に、たまにはいいなぁと、まんざらでもない気分になった。

お見合い場所は高級小料理屋、老舗で有名な店だ。


お偉いさんの接待で使われる場所だ。



どんとした和のつくり、個室で畳の上で正座して、

部屋の外は、いかにもな日本庭園、良く手入れが行き届いた庭、

ところどころに配置された岩、大きな木と、池の中には見事な錦鯉が泳いでいる。

岩に流れる水、水が溢れると竹が落ちて、かこん、小気味いい音をたてて岩に当たる仕組みになっている。

いかにもお見合いって感じなんですけど……。



桐生は一緒に仕事してて感じたけど、どうも形から入るタイプだし、

こういうの好きそう。


……まぁ、あたしも嫌いじゃないけど。



両親同士が顔を付き合わせて、和やかに会話が弾んでいる。


「まぁ、綺麗な娘さんで、うちの蓮司とは同じ会社ですってね?」

桐生のお母さん、に話かけられる。

桐生はお母さん似なんだろう。

品のある美人でぞくりとする色気がある人で、姿勢も良くて、ぴしりとした印象だ。


「はい、実はそうなんです、少し驚きましたけど……」


姿勢を正して、笑顔で話をする。


「大阪の会社にずっと働いてたからね、いい加減にこっちに戻ったらいいと、私達の方から言って今の会社にうつったんだ、向こうでは営業部長だったようだけどね」


桐生のお父さん、

渋い男前タイプ、こちらも品がある。


メガネを掛けて、おしぼりでテーブルを拭く姿を見ると、

性格はお父さんに似たのかと思う。

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