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妖魔の憂鬱

第5章 朝田 順子(あさだ じゅんこ)

壱星は長い廊下を歩き、幾つか扉を通過して中庭に出た。そこに居たのは布を1枚だけ身につけた優月だった。優月は身体中に淫紋を露にして肩で大きく息をしながら…空を仰いで月光浴をしていた。

優月は、ゆっくりと瞬きをして壱星の姿を瞳に捕らえた。その眼差しと微笑みは、まるで女神のものとも、天使のものとも見紛う程に美しかった。

2人は言葉を交わすこと無く間近で向かい合い、鏡に触れる様に互いに手を伸ばた。動きを同じくして指を絡ませ、また一歩近づく。優月が壱星の胸のボタンに手をかけると、2人は協力して壱星の衣服を脱がせた。壱星が優月の腰を抱く。

2人は、一体になる方法など知らなかった筈だが…自然と体を触れ合わせた。それは、この世の生きとし生けるものが、誰からも教わる事無く子孫を残す方法を知っているのと同じなのだろう。その時が来たら、自然と成るべくして成っていく。

優月の体に触れた所から、徐々に淫紋が壱星に移っていく。そして壱星の身体に淫紋が充満した頃、2人の淫紋は少しずつ光だし…やがて全身を発光させた。その光は、2人の密着した腹の高さ辺りで凝縮した様に、より一層光りながら小さな球体になった。

2人が作り出した光る玉は、しばらくその場に浮いていたが…やがて勢い良く空へと舞い上がり、飛んで行って消えてしまった。


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