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ながれぼし

第1章 きみのそばで



結局、のほほーん。とした智くんと話をしていたら、なんかどーーでも良いような気さえしてきて、でも…やっぱり智くんには関係無いし。とも思いながらも俺の事を話した。



俺の親は、有名な会社のお偉いさん。因みに言うと祖父もだ。

そして、そんな家に産まれた俺は、
当たり前のように卒業後には、そこに就職する。

んで、産まれる前から結婚相手の家柄は決まってて、俺が産まれて2年後には、ちゃんと結婚相手が産まれた。いつかはそいつと結婚する。

俺の人生ってこんなの。


智くんに話したのはここまで。
にしようと思ってたのに、何か言うでもなく、頷くでもなく、ただ俺をその優しい目で真剣に見ててくれるから、余計なことまで喋ってしまった。


俺の人生こんなんだから
今まで誰かをすきになるなんて無かったし、望んだことはない。

…違う。望まないようにしてきた。
だって結局報われない。気持ちなんて無駄なだけ。
だから…気持ちの無い相手と遊んで、その時がくるまで待つだけだ。と。


でも…

今日…彼女に向かって、優しく笑う智くんを見て。なんで俺は、すきな奴すら選ぶことが許されないんだろうって。俺も、あんな風に笑うことができたら良いのに。って。
そう、思ってしまった。

…流石に智くんの事だとは言ってないけどさ。


話終えると、ふっ。と肩の力が抜けた。

結構緊張してたみたいだ。
こんなこと、ちゃんと人に話したのは初めてだもんな。


「…」
大「…」

ま、こーなるよね。
こんな話されたところで、困るわな。

「なんか…」
大「翔くん。」

『こんな話して悪かったな』って言葉は、智くんの穏やかな声で遮られる。

大「…あのさ…えと…」

「?」

口を開けては閉じる。を繰り返す。

「…なに?」

大「あ…全然検討違いだったら、あれだけど…」

「…うん?」


大「翔くんは…、ご両親のことが、すごく大切なんだね。」

遠慮がちな口調とは裏腹に、しっかり俺の目を見たまま、そんな事を言い出す。

大「すごく…すきなんだなって。」





……なんだよ


俺が、いつそんな事言った?


なんで…


なんで、わかんだよ…


いつもびっくりするぐらい変なこと言うくせに


それが悔しくて、睨むように智くんを見れば


優しい顔が、やっぱりそこにはあった。

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