
ながれぼし
第3章 冬以上春未満
キラキラ
キラキラと
輝く街のネオン。
俺の前には、智の背中。
ふわふわ。とその柔らかそうな髪の毛を風に揺らしながら、ゆっくりと歩く。
ドキドキ
「さ、智、さん?」
ドキドキと
「えと…どこに…?」
俺の心臓は速くなるばかり。
「智さん?」
じわじわ。と握られている腕が熱い。
あぁもう…腕が焦げそうだ。
俺の質問を無視し続けて
智の足が止まったのは、賑やかな街を抜けた、海が見える公園。
大「なぁ」
やっと振り返ってくれた智。
そしてその綺麗な瞳が俺を見る。
大「…なに笑ってんだよ。」
え?
「俺、笑ってた?」
大「デレデレすんな。」
あ、漏れちゃってます?
「えへへ。だって智さんが俺に触ってくれたの初めてじゃん。
…名前を呼んでくれたのも…嬉しくて。」
大「…。」
それに…すごく会いたかったんだ。
声が聞きたかった。
その穏やかな声で…名前を呼んで欲しかった。
その綺麗な手で触れて欲しかった。
ずっと…ずっと願ってた事が、今日叶っちゃったよ。
うん。
でも……もう終わり。
「翔ちゃん。…いい人だね。かっこいいし、優しいし、気さくだし。智が…好きになる気持ちもわかる。」
大「…。」
泣かない。
「今まで、しつこく つきまとってごめん。
俺、智のことは今日ですっぱり、あ…諦め…」
…
…諦める。って言わなきゃ。
なのに…
言葉が続かない。
涙が出そうで
ぎゅう。と俺の前歯は下唇を噛み締めてしまう。
大「諦めんの?」
その言葉に、下を向いていた顔をあげる。
智の表情は変わらない。でも…少し強めの口調とは違って、俺を真っ直ぐ見つめる瞳は……
…っ
駄目…なのに…
諦め…
られるわけない…
だって…こんなに胸が苦しいんだもん
だって、息が…できなくなっちゃうくらい…
好きで
好きで
「…っ大好き…!なんだよ!」
言葉を発したと同時に、こぼれた涙が腕を掴む智の手に落ちる。
「…諦められない、よ…智には翔ちゃんが…いるのにっ、頭ではわかってるのにっ…俺…、俺は…智が好きで…大好きで…堪らないっ…!」
ボロボロとこぼれる涙のように…
俺の気持ちが溢れてしまった。
