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雪に咲く花

第18章 崩れていく幸せ

ファミレスのアルバイトが終わると、今までにない疲労感が襲う。
颯人が入院している分、仕事が増えているのだ。
「もう、クタクタ……」
家に帰り、食事を済ませるとソファーに横になった。
疲れを感じながらも、亘と簡単に会えなくなったこと、颯人の災難や、亘とのことで始まったイジメなどの辛い出来事は、ある程度紛らわすことは出来た。
颯人がいなくなってから、自分がどれだけ、彼の存在に守られていたかを改めて感じる。
今は、自分で身を守るしかない。
名前も顔も知らない優しい誰かがくれたメッセージ付きの絵葉書の栞を、挫けそうになるたび思い出そうと決意した。

「雪斗!電話よ。亘先生から」
ソファーでうとうとしていると、美紅から声がかかった。
スマートフォンを食卓の上に置きっぱなしにしてあったのだ。
「えっ!亘から」
美紅から電話を受け取ると、耳に寄せた。
「亘……?」
「雪斗、今日は、言っておきたいことがあってな……」
亘とは、ほとんど毎日、電話とメールのやり取りだけはしていた。
学校を、追われた亘は、家庭教師のアルバイトをしながら、新しい就職先を探しているようだ。

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