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WーWING

第6章 ディープインパクト

 だが、隼斗の心配をよそに、その奇行は向こうからやってきた。


「んぐっ!!」


 優雅から攻めてきた。


 しかも、カマキリが獲物を捕まえたように、しっかりと腕をまわしてきた。


 口の中になにかが押し込まれた。


 生温く、べとべとしたものが、舌に絡み付いてくる。


 悲鳴と笑いが聞こえる。よく聞けば口笛も……。


 優雅は口を離した。


「昨日のお返しだ。次はディープにいこうぜ」


 そう言って、優雅は教室に戻った。


「……優雅……口臭いよ……」


 いますぐ、口をゆすぎたい。だが、もう先生が階段をあがってくるのが見えた。


 隼斗はハンカチを使って舌を拭い、唾を溜めては、ハンカチに受けて丸めた。


 教室に入れば、無視かチラ見。


 汚れたものを見る目で、見られる。


 そんな目で見ないでほしい。


 本当はそんなんじゃないんだよ。


 違うんだよ……。


 まさか、同性愛者はこんな目で、見られているのか?


 自分もこんな目で見ていたのか?


 同性愛は認めたくなかった。けど、こんな思いをしていたんだ……。


 隼斗はなんとなくだが、男性の同性愛者の気持ちがわかる気がした。

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