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第10章 男の約束

 輝基と美晴は、この空気の捉え方がわからず、動いていいものかどうかの判断がつかなかった。


 この緊張感を打破するために、口を開いたのが、弟、輝基だった。


「お父さん、それ本当のこと? お兄ちゃんが、山のふもとで拾われてから知人の手に渡って最終的にうちに来たって、嘘だろ!?」


 それに対し、雲幸が反論。


「ちょっと待て輝基!! それは違うぞ!! 隼斗は養豚場の藁の上に寝かされてたんだ」


 それに対して隼斗が叫んだ。


「ちょっと待てっ!! なにから、突っ込んでいい!? 輝基!! お前、勝手に話を付け足すな!! 親父、酒入ってるから、人間か豚か、わけわかんなくなってんだよ!! その話、実の親が誰かわからないパターンだよね? 最終的に、たらい回しにされたの? それ、救いないよな!!」


「ちょっと、隼斗、落ち着きなさい」と富美子が宥める。


「聞きなさい隼斗。私達は血が繋がってなくても、親子の絆はかわらないのよ」


「よけい傷付くわっ!! じゃ……美晴と輝基は、実の子か……」


「この子達が、まだお腹にいるときにあなたが来たの。わかっているのは、あなたの生年月日だけだった」

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