
愛すると言う事…
第5章 episode 5
『翔さん!◯◯町の海岸沿いです!』
シゲからの最後の電話に、俺は車を飛ばした。
調べさせたGPSは、途切れ途切れに居場所を知らせて。
…多分、時々入る電源のせいだろう。
最後の現在地を聞いて、夢中でアクセルを踏む。
……頼む。
馬鹿な事だけは……
信号で止まる度にハンドルを叩き付け、またアクセルを踏んだ。
免許の無い智の事だ。
電車で向かったんだろう。
数時間前、斗真から"通帳が解約された"と連絡があった。
"あいつら"に渡したんだとすぐに予想できた。
許さねぇ。
身寄りもない智を、ここまで追い詰めた"あいつら"。
絶対に、許さねぇ。
待ってろ、智。
お前を見つけ出したら、必ず仕返ししてやるから。
お前がやりたくもないホストと言う仕事を、必死でこなして貯めた金。
血反吐を吐かしてでも返してもらう。
見えてきた海は、真っ暗で。
車を飛び降り走った。
もちろん人影なんか見当たらなくて。
砂浜に見える一人分の足跡。
辿ると、行き着いた先は……
海の中へ向かっていた。
翔「…智ぃーーッッ!!!!」
返事の無い海に、夢中で入って行くと。
浮かぶ人の影を見付けた。
必死で引き摺り砂浜に上がると、ぐったりと顔色の無い智は呼吸も無く。
習った事なんか無い蘇生と人工呼吸を繰り返しながらシゲに電話をした。
翔「救急車ッッ‼急げッッ‼」
脈を探っても素人の俺に分かるはずもない。
必死で繰り返した。
翔「…頼むっ!……智っ!……目、開けろッッ‼」
どのくらいそうしてたのか、目を開ける事も呼吸が戻る事も無い。
それでも。
この場所で再び電源を入れた智は、絶対に助けてほしかったに違いないんだ。
だから、一瞬でもこの場で電源を入れた。
俺はそれだけを信じて…
