テキストサイズ

僕ら× 1st.

第3章 2人の証 --Ior,Hzm

***

リィが留学して、早2か月。

2学期に入り体育祭の準備に慌ただしくなる放課後を抜けて、いつもの空手道場に行くと、アルが上気した顔で駆けよってきた。

「兄ぃっ!俺っ、好きなコできたっ!」

あ?
つい先日こいつって、泣かない女がいいとか言ってたよな?

「お前の理想とする砂漠女が実在したのか?」

「ちげぇよ。あれ、取り消す!すっげ泣いてたけど、もうあのコしかいねぇ!内緒だぞ?」

「内緒ってお前、もっと小さな声で言うもんだぞ?…て、泣かしたのか?」

好きなコを泣かした?ダメだろ?

「始めっから泣いてたんだよ。俺、まだ喋ったことねぇもん。きっと向こうは俺のこと知らない。ピアノがすっげうまいんだ」

泣いていた女のコを好きになったということか。
何かひどく興奮しているようだけど喋ったこともないって、まさかこいつが?

砂漠からスコールかよ?
短期間のうちに180度方針を変えたこの男、いつもながら見ていて飽きないな。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ