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僕ら× 1st.

第15章 学校祭 --Ar,Shu,Ior

ピアノ前から立ち上がった花野は鞄から楽譜を取り出して、スマホデータを格納していた僕に見せる。

「あのね。もう一曲ね、伊織君と演奏したいの」

少し頭を傾け、僕の瞳をじっと見つめて訴える。
そんな顔で言われちゃ、断れないな。

「ん、何?」

それは、ピアノとドラムのデュオ。

「これ。さっきのはどちらかっていうと、しっとりしてたでしょ?次は元気な曲。昔に一緒に歌ったよね」

両親プロデュースの下、幼いキミと手を繋いでステージに立った。

舌ったらずの僕らは可愛いともてはやされて、この一曲が入ったCDは、結構売れたって喜ばれた。

「…ちょっと練習してみるよ」

と、練習中の僕をキミは撮影しだすんだ。
そんなに難しくない曲でよかった。

軽快にリズムを刻むバスドラムの期待感が楽しい。
これに乗るは懐かしいメロディ。

と、顧問が入ってくる。

「お前ら、帰ってこないと思ったら!」

予定も約束もしてないのに、そう目を光らせるなよな。
隠れていかがわしいことしてたわけでもなし。

「お、先生。いいところに来た。今から演奏するから、僕のスマホで花野を撮影して?」

僕の思い出作りに一役買ってくれよな?

「先生、私のも!」

「じゃ、速水ので撮るからあとでデータわけてやれよ」

「よろしくね、先生。じゃ、Ready?」

急いでキミはピアノに戻り、顧問は撮影に入る。

忘れないよ。
キミと過ごしたこれまでも、これからも。

キミがいた幸せは、僕の宝物。

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