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僕ら× 1st.

第13章 ク"ニコ"ム --Shu

「もう本当に酔っぱらってないのか?」

俺の問いに目を細めて彼女は笑う。

「酔っぱらいのフリなんて、諜報の常套手段でしょ?」

「ああ、そっか」

まだ若いのに、彼女にはどんな過去があるんだろ。
でも、彼女の自尊心をこれ以上傷つけるのは得策じゃない。

「私の告白、胸に響いた?」

彼女のしっとりとした手のひらが俺の頬に当てられ、つつつと輪郭をなぞる。

「…俺のこと、騙していいよ。但し、俺だけの彼女になってくれる?」

了解した彼女と唇を重ねる。

俺がキミを抱くことでキミが救われるのなら、俺を好きじゃなくても……。

「彩華さん、逃げるなら今のうちだよ?」

髪を撫で、抱き締めても、彼女は俺のなすがまま。
これが彼女の仕組んだ挑発であっても、もう戻らない。

「はぁ……んッ、柊君っ」

俺の腕の中で乱れる彼女は、今までの誰よりも熱くて可愛くて。
これは、彩華さんの豊富な経験のせいか、俺の心理的なものなのか……。

動かないうちに果てた俺を、笑いもせずに抱き締めた。

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